心の中は既に春、里山です。
タイトルまま、メダカの治療に失敗しました。水カビ病と思われるのですが、薬浴で消失せず、逆に育ってしまいました。
水カビ病の治療は薬浴と加温(25℃付近)がセットなのですが、薬浴だけしかさせなかったことが原因でしょう。
――病気の治療には水温が大切
薬浴だけでは片手落ちです。薬による治療だけではなく、カビが繁殖しない温度に水温を設定しておく必要があるのです。
しかし、里山はこうも思いました。
「何で低温でカビが繁殖するんだろう?」
里山のカビのイメージは「高温多湿」です。水カビ病の元となるカビは、なぜ低水温下で繁殖が出来るのでしょうか。
カビの繁殖温度
カビの繁殖には温度と栄養が不可欠です。どちらかが欠けていると、なかなか繁殖出来ません。
繁殖温度に疑問を持ち調べてみたところ、菌によって好む温度域が分かれているという事実に行き当たりました。
前述の通り、里山の中には「高温多湿=カビ」のイメージしか無かったので、完全に盲点になっていたのです。
カビを含む微生物郡には、低温を好むものから高温を好むものまで沢山の種類がいます。
好冷菌
0℃近傍を最適温度領域とする菌。20℃以上では増殖出来ない。0℃でも生育可能で、15℃以下で最もよく生育する。
中温菌
20℃~45℃を最適温度領域としている菌。
好熱菌
45℃~60℃を最適温度領域としている菌。
高度好熱菌
60℃~80℃を最適温度領域としている菌。
超好熱菌
90℃~100℃を最適温度領域としている菌。
活動の限界値
好冷菌から超好熱菌まで5つの分類をあげましたが、よく見ると「活動の限界値」が見えてきます。0℃以下を好む菌と100℃以上を好む菌がいないのです。
どうやら0℃付近と100℃付近は限界値のようですね。(→参考:文部科学省・カビ対策マニュアル)
通常のカビや酵母は0℃以下、または40℃以上にすると生育不可能になります。食中毒予防のために冷蔵したり、或いは加熱するのはそのためです。
燻製のように水分をカットしてしまうのも手ですが、メダカの治療には使えませんからね……。
低水温とメダカとカビ
水カビ病は水生菌ミズカビ科の菌(Saprolegniaceae)が体表に寄生することで発症します。中でも魚に感染するのはミズカビ(Saprolegnia)、ワタカビ(Achlya)、アファノマイセス(Aphanomyces)の3属です。(→参考:原生生物図鑑)
ミズカビ科の繁殖温度の詳細が見つけられなかったのですが、水カビ病の治療に25℃付近への加温が必要なこと、低水温下で発症し易いことから、原因菌は好冷菌の一種であると推測します。
↑接写したのでボケてしまいましたが、口と咽喉の部分に白いモヤが見えます。また、よく見ると背中の部分もモヤっとしています。
外傷と腸内の環境
外傷による皮膚疾患があったり、消化障害を起こしている場合、水カビ病に罹患し易い傾向があります。
どちらも秋冬のメダカは要注意です。理由は以下。
水底へ潜る
水温が低下するとメダカは水底へ潜ります。小さな隙間に入り込むことも多々あります。
この際、底材に硬いものや角のあるものを使用していると、メダカが外傷を負ってしまいます。
消化不良になり易い
活性が下がっているため、エサを食べても消化し切れない可能性があります。
実際に腸の調子が悪かった
病気のメダカを揶揄してロングフンメダカと呼んでいましたが……。まさに、ですね。
今回保護した時も、このメダカは細長い糞をしていました。薬浴で使ったメチレンブルーに染まってしまうような、色の無い、細い糞です。
↑腹部から細い糸のような糞を出しています。わかり難いですが、一部濃い青に染まった部分(メダカの腹ビレ下辺り)を目印に辿って行くと見易いです。
背骨の奇形の影響で、もしかしたら内臓系統が弱いのかも知れません。
なるべくしてなった感があります。
薬浴と加温
薬で殺菌しても、僅かな生き残りが居れば菌は瞬く間に繁殖をしてしまいます。菌の繁殖しない温度にしてしまえば、菌はそれ以上増えることが出来ません。
――増えないようにしてから叩く
薬浴+加温は何だか確実性が感じられますね。
加温の効果
水温を上げることはカビの繁殖を防ぐ以外にも、メダカの活性を上げるという効果が得られます。
25℃はメダカの好む温度帯です。メダカ自身の免疫力が上がり、カビに対する抵抗が強くなります。
おわりに
こうして調べていくと、水カビ病の病因病機(=病気になっていく仕組み、メカニズム)がとてもよくわかります。
ただ治療の仕方を検索するだけでは無く、深く知ることが大切ですね。
今回、ここまで調べてやっと水カビ病が理解出来ました。
見捨てたい気持ち
正直に言いますが、里山はこのメダカを見捨てるつもりでいました。この先繁殖の予定もありませんし、1匹のメダカにばかり構っていられないからです。
ですが、病気について調べた結果、「加温で本当に効果が得られるのか?」を知りたくなりました。
ただ今ロングフンメダカは薬浴と加温で療養中です。
既にかなり弱った状態で、網で掬う際も無抵抗でした。復活するかはメダカの生命力と里山の腕次第なのですが、果たして?
追記
移動から約2時間後、ロングフンメダカが逝きました。記事をあげてから、そう時間は経っていません。
・エラの動きが全く確認出来ない
・体色の白濁(透き通っていた部分が濁り出す)
・刺激に対する無反応
上記3点を確認後、暫く様子を見ましたが「死亡」と判断しました。
特に悲しいとか淋しいという気分はありませんが、里山が病気について学んだ後のこと。自らの死をもって学ばせてくれたのだと思っています。(あんまり良い飼育者じゃなくてごめんなさい。)
メダカにしろヒトにしろ、死ぬ時は死にます。例外はありません。
合掌。