ミジンコ教の信徒、里山です。
先日、知り合いのおっさんからメールが届きました。「参考までに」と添付されていたのは、とある新聞記事でした。目を通すと、そこにはこう書かれていました。
――メダカの「性決定」解明
メダカたちもヒトと同様、オスはXY、メスはXXの性染色体を持っています。
ですが、これが一定の条件化に置かれると、オスがY遺伝子を持ちながらメスに、Y遺伝子を持たないメスがオスにと変化するらしいのです。
「ほう!面白い!!」
おっさんにお礼のメールをして、早速記事作成に取り掛かりました。
メダカの性決定
今回の研究は名古屋大学と国立遺伝学研究所の共同研究になります。
新聞記事の内容を要約し、肝となる部分を書き出すと……
――生殖細胞の働きで、遺伝子(XY/XX)とは異なる性に変化する
一体どういうことなのでしょうか?
生殖細胞とは
生殖細胞とは、遺伝子を次世代に伝える役割を持つ細胞のことです。精子や卵子、それの元になる細胞などが該当します。
生殖細胞以外の細胞は体細胞と呼ばれます。
性染色体とは
性決定に関わる遺伝子のことです。XやY遺伝子のことですね。
性染色体で雌雄が決まる
メダカの性決定は性染色体により決まります。
冒頭でも述べましたが、XYの性染色体を持つとオス、XXでメスになります。メダカの性決定は遺伝的なもので、通常は性転換が起こることはありません。
生殖細胞に働きかける
通常は性染色体によって決まる性。しかし、生殖細胞に働きかけると、この性が変わってしまうというのです。
新聞記事によると、オス(XY)になる予定の卵の生殖細胞を増加させたところ、XYを維持しながらも体型はメスに、卵を作り出すことも出来たと書かれていました。
遺伝子的にはオス(XY)を維持しつつ、体の機能はメスになっているのです。
性のコアメカニズム
新聞の内容ではざっくりし過ぎているので、今回の研究を行っている名大のHPを見てみることにしました。
一方の性に維持される性
オスかメス、どちらかに決定されたように見える性。これは固定されたものではなく、シーソーのようにどちらに傾くかで働きが維持されるようです。
――どういうことか?
メスに決まったとしてもそれが破綻するとオスになり、オスの状態が破綻するとメスになるといった、雌雄のどちらか一方には常になれる保障機構(性のコアメカニズム)が性の根底にあるのです。
生殖細胞と体細胞
生殖細胞はメス化能力を持ち、体細胞はオス化する能力を持っています。
メス化(卵巣形成)には、生殖細胞が適正数存在することが必要条件です。その数が少ないと、体細胞の能力が勝り、Y染色体がなくてもオス化してしまいます。
また生殖細胞が過剰に存在すると、Y染色体があってもメス化してしまいます。
通常はXY遺伝子を持つと、体細胞側のオス化能力が強まり、生殖細胞のもつメス化能力を抑制するように働きます。
生殖細胞のバランス
性のコアメカニズムを踏まえて、新聞に書かれていた実験内容を振り返ってみます。
実験ではオスの生殖細胞を増加させました。それにより起こったのは、オスのメス化です。これはオスとしての状態を破綻させた結果、メスになったと言えます。
逆にメスの生殖細胞の数を適正数より減らすと、XXを維持したままオスになるそうです。
研究の結果は
性の決定のメカニズムがわかれば、養殖技術への活用が期待出来るのでは?とのことです。
以前記事にした光るミジンコもそうですが、我らがメダカちゃんたち小さな生物は、見えないところでヒトの生活を支えるために大活躍をしているのです。
→もっと詳しく知りたい方は、名大・生殖生物学のページへGO!
おわりに
不思議な世界ですね。メダカ先生が教えてくれる生物学は、本当に興味深いです。
養殖技術への活用はともかく、性の決定メカニズムを知ることは、生命を紐解く上でとても大切なことと思います。
改良メダカの種類を覚えるより、こういったことに関心を持ってメダカ飼育をしてくれるチビっ子が増えたら、日本の未来は明るいんじゃないかなと思う今日この頃。
コメント
メダカの雌雄の変化は、興味深いですよね!
早く育てる養殖ウナギは雄になり、ゆっくり育てると雌が現れるとかニュースが報じていた事がありましたが、雌雄のメカニズムはまだまだ未知ですね。
人間も最近はよく分からない方々が、多くなったような気がします(笑)
ジークさんへ
コメント有り難うございます。
雌雄が何処で決定付けられるのか、面白いですよね。昔、ワニは孵化温度で性別が決まると知って興味津々でした。
生物の世界って、本当に興味深いですよね~。