メダカ講座まとめ(1)
メダカ大好き里山です。
メダカの繁殖には光が大きく関係しています。繁殖に必要とされる日照時間は13時間以上ですが、そもそもなぜ光が必要なのでしょう。
――日照時間が長くなれば地面が暖まり、気温(水温)が上がるから?
いいえ、違います。メダカも私たちヒトと同じで、光によって体のリズムを作っているからです。
メダカの産卵と光
メダカは卵生の生物であり、その産卵条件は光に依存しています。
日長時間が十分であれば季節に関係なく卵が作られます。逆に日長時間が不十分であった場合、卵は出来ません。
光が無ければ産卵が出来ないのです。これはホルモンの働きによるものです。
日長時間とホルモン
日長時間が13時間以上となると、メダカの脳下垂体からゴナドトロピンが放出されます。ゴナドトロピン(gonadotropin)とは生殖巣刺激ホルモンのことです。
gonad 生殖巣 trop 発達させる in 物質名を表す表記
と、いうことらしいです。(教えてもらうと面白いですね。)
このゴナドトロピンの刺激により、メスの卵の成熟が促されます。卵は夜中の内に成熟して、交尾が始まる5~6時間前には受精可能な状態となっています。
オスの場合も同じで、ゴナドトロピンが働くことで精子が成熟します。
光の少ない場所(もしくは夜)では、松果体からメラトニンが放出され、ゴナドトロピンの分泌を抑制するため、卵や精子の成熟は起こりません。
メダカの産卵シーズンは夏が本番です。
日長時間の長くなる夏はゴナドトロピンが沢山放出されるので、毎日のように卵を産みます。秋、冬と次第に日長時間が短くなっていくため、ゴナドトロピンの分泌が減っていきます。代わりにメラトニンの分泌が増え、やがて産卵が起こらなくなります。
卵生と過抱卵
メダカのメスには過抱卵という病気がありますね。お腹の中に卵が一杯なのに、産卵することが出来ず苦しむ症状です。
こんなことになってしまう原因の1つが、メダカが卵生であり、光に依存していることがあげられます。
卵生と胎生の違い
卵生動物とは卵を産んで増える動物のこと。メダカは卵生動物です。
胎生動物とは、ヒトのように体内に胎児を身篭る動物のことです。
胎生動物の排卵は胎児に依存し、母体内に胎児がいる時は次の排卵が起きません。次の排卵が起きてしまったら胎児が流れてしまいますからね。
では、卵生動物であるメダカの場合はどうでしょうか。
メダカの産卵は光に依存しています。つまり、お腹の中に卵が入っていても、日長時間が満たされれば次の卵が出来てしまうということです。
メスはオスに体を擦ってもらわないと体外に卵を出せません。卵を出さないままに光を当て続ければ、やがでメスのお腹は卵でパンパンになってしまいます。
卵を産ませたくなければ暗い場所に水槽を置いておく必要があります。暗い時間が増えればメラトニンが分泌され、卵の熟成が抑えられます。
産卵の条件がわかっているのだから、その逆を作ってあげれば良いわけですね。
研究結果から導き出された答え
通常、メダカの受精は体外受精です。メスが体外に放出した卵にオスが精子をかけます。ですが、これを意図的に体内で受精させたらどうなるのか、実験をしてみたそうです。
胎生のように排卵が抑えられるのか、実験をもって検証したんですね。
体内に受精卵を抱えたメスの排卵は止まることなく、光の刺激によって卵が作られ続けたとのことです。
ずっと光を当て続けるとどうなるのか
ずっと光を当てていてもメダカは卵を作ります。ですが、光に当て続けていることで体内時計が狂い、いつ産卵するのかわからなくなるそうです。
これは一定時間暗い時間を入れてあげることで解消されます。
この明暗のリズムを利用して、意図的に産卵の時間をずらすことも可能なようです。
メダカの雌雄は入れ替わらない
以前、メダカの繁殖に関して調べていた時のことです。
「メダカは雌雄が入れ替わるから、メス(オス)だけも産卵する。」という奇妙な一文をウェブ上で見かけました。(何のページかは忘れてしまったけれど……。)
――なら、なぜ過抱卵が起こるのか?
もし雌雄が入れ替われるのであれば、過抱卵なんて起こらないと思いませんか?
多分、私と同じように眉唾モノの噂を聞いたことがあるのでしょう。受講生の方の一人が「メダカのオスメスは入れ替わるのか?」と先生に質問をしていました。
55年間毎日メダカを見てきた先生の答えは「NO」です。メダカのオスはオス、メスはメスなんです。
この噂の元となったであろう生物は、メダカ館の中にいました。そして、その説明板に夢中になってしまい、実物の写真を撮り忘れてしまいました。間抜けちーん……。
メダカでなくカダヤシの一種です。昔、カダヤシがメダカ目に分類されていたため、そのような話になったのであろうと思われます。
まとめ
・メダカの産卵は光依存である
・日長時間が13時間以上で、ゴナドトロピン(生殖巣刺激ホルモン)の分泌が促進される
・ゴナドトロピンの働きにより、卵子も精子も受精可能な状態に成熟する
・ゴナドトロピンの分泌はメラトニンによって抑制される
・メラトニンが分泌されている時、生殖細胞の成熟は起こらない