生物が商品になるということ

メダカ大好き里山です。

先日「飼っていたメダカが亡くなった時、どうすれば良いのか」という記事を書きました。何でそんな記事を書いたのかと言えば、自分の所へやって来たメダカたち(ペット)を大切にして欲しいからです。

今回は、生物(動植物)が商品になるとはどういうことなのか、農場で働く立場から書いてみます。

植物の出荷作業

私が働いている農場では、主に植物の苗などを出荷しています。

播種(種まき)→定植(プラグ苗をポットへ移す)→栽培(出荷サイズまで育てる)→出荷(ラベルを挿しケース詰め)のサイクルを繰り返すのですが、ピーク時はあまりの定植量の多さにクラクラする程です。(それもまたやりがいがあって楽しいのですが。)

植物は工業製品ではありませんから、頑張れば一昼夜で出来る……というものではありません。もしもの場合を考えて、少し多めに生産されます。100ポット受注があったら、110ポット分生産するといった感じですね。

生産数が決まり、いざ播種!

これがまた難しい。計画分の播種をしたとしても、全てが芽吹くわけではないんです。発芽しない種が必ずあります。また、発芽に最適な条件で発芽室を管理していても、ほとんど発芽しないこともあります。

生物を相手にするって、そういうことなんです。一筋縄ではいきません。

うまく発芽してくれても、その後の管理を怠れば、一瞬で使い物にならなくなります。写真は発芽後、発芽室から出し忘れたプラグです。もやしになっているのは葉牡丹です。

定植は迅速かつ丁寧に

発芽した後、植物たちはきちんとした双葉になるまでプラグ(苗床)で過ごします。移し替えても良い段階まで育ったら、いよいよ定植です。

定植は全て手作業です。何百、何千あっても手作業です。

破損させてしまっては商品になりません。苗を折ってしまわないように丁寧に扱いつつも、素早くポットへ移し替えて行きます。

この段階で異常のある苗は廃棄されます。育てても出荷出来ないため、植えただけ無駄になるからです。

栽培は水管理が難しい

植物ごとに欲しがる水分量は違いますし、水をやるにしても「出荷サイズを超えない程度」に与えなくてはいけません。

水をやればやるほど育つ野菜のような植物は、必要最低限の水しか与えられません。たっぷりと水をもらえる家庭菜園の野菜たちとは大違いですね。

夏の暑い盛りなどは可哀想で仕方ないのですが、ここで水を沢山あげてしまうと商品にならなくなります。出荷サイズに収まり、かつ枯れてしまわないように、植物の状態を見ながら水をやっていきます。

仮に病気が発生した場合、薬で対処出来る場合は対処します。数ポット程度の被害であれば、罹患した植物を隔離もしくは廃棄します。

出荷は最終審査

出荷するということは、ケース詰めした商品が実際に顧客の物になるということ。変なものは出せません。発育不良であったり、出荷基準を満たさなかったものは、出荷されることなく廃棄処分されます。

計画数分育てた中から、より良いものを選んで出すわけです。

顧客の手元に行く商品とは、各段階で生き残った「生存者」なのです。

生物が商品になるということ

出荷されなかった苗は、水を一切与えられません。もう育てる必要がありませんからね。枯らして処分、もしくはケースごと山積みされて廃棄されます。

「もったいない」と、タダで第三者に配られることはありません。

パン屋や惣菜屋などと同じです。閉店まで売れ残った商品は、食べれようが食べれまいが、全てゴミ袋行きです。そうしないと商売が成り立たないからです。(タダで配れば価格崩壊に繋がります。)

もちろん、そうならないように廃棄率を考えて生産されるのですが、廃棄率をゼロに近づけることは出来ても、完全にゼロにすることは非常に難しいです。

前述しましたが、植物は工業製品ではありませんから、一昼夜で出来るものではありません。成長するまでに相応の時間を費やします。成長したとて出荷基準を満たせるかは未知なので、受注数ピッタリで生産が出来ないのです。

私自身、農場の仕事に関わるようになってから、何度も植物を廃棄しました。自分が定植し、水をやり、大きくなっていく様を見ているわけですから、可哀想に思わないはずはありません。ですが、商品として植物を販売している以上、それは仕方が無いことなのです。

自分に出来ることと言えば、嫁(婿)に出しても恥ずかしくない、立派な子に育てることだけです。

メダカが商品になるということ

ジャンルは違いますが、メダカが商品として扱われる時、私が農場で見ているようなことが販売業者の間で行われているはずです。

具体的には……

・針子の段階で異常が見られる場合に何かしらの対応(廃棄?)

・成長段階で異常が見られる場合に何かしらの対応

・出荷基準を満たすための育成(エサ、遊泳量など)

・出荷基準に達したものと、そうでないものの選別

以上のようなことです。

商品にならないメダカをどうしているのかは会社の方針で違うでしょうし、個人のブリーダーと企業とでも違うでしょう。

選ばれなかったメダカたちの辿る運命は知りませんが、商品として出荷されたメダカたちは、間違いなく厳しい審査を潜り抜けた子たちです。

時に飼育に失敗する(=生体の死)こともありますが、縁があって自分の元へやって来てくれた生物たちです。大切にしたいですね。